【連載コラム:にほんのココを魅せたい。】vol.4シンガポールのウェルネスライフ。

こんにちは。Momo です。夫の仕事に付き添ってシンガポールでの移住生活を4年間楽しんだ後、現在は東京暮らしをベースに、時々シンガポール滞在。のほほんと、なんとなく二重生活を送っています。日本(東京)で、シンガポールで、その他の東南アジアの国で見つけた日本の魅力を書いていきたいと思います。

“シンガポールの今。健康意識のその先は?”

7月中旬からシンガポールに来ています。現在、私と娘は東京を生活拠点においていて、娘の幼稚園の長いお休みの度に夫が生活しているシンガポールに滞在しているわけですが、そうすると、周囲の人達に良く聞かれるのが、「東京とシンガポール、どっちが暮らしやすい?」ということ。日本で生まれて日本で育ち、この国で五感を育み、そして、一度日本を離れて生活した私にとっては、日本の四季自然がもたらす素晴らしさ、その恵みに感謝しない時はありません。東京という都心の中であっても、住まいの窓辺からも感じることができる繊細な四季の変化。四季のある国は日本以外にも数多くあるけれど、特に季節が移り変わる時の風の感じとか、とにかく日本はサイコーです。が、しかし、“どっちが暮らしやすい?”という質問の解釈を、コンビニエンスとか、take it easy とか、そういったニュアンスも含めて考えると、うーん。答えを出すのが難しい…。

例えば、健康管理面において。日々の生活の質をより良い状態に維持するには、自分にあった何らかの「運動」が日課になることが求められます。動きやすい体は心もアクティブにしてくれる。国を総じて健康意識の高いシンガポールでは、ヨガやフィットネスにおいて“話題の”最新プログラムをあちらこちらで気軽に体験することができます。英語が公用語であるために、フィットネス先進国である欧米諸国からのトレンドが拡散されやすいわけですね。そして、国土が狭いことで島内のどこからでも自分によりフィットしたサービスを提供する場所にアクセスできる。それは、今までの生活スタイルをこれからの自分にフィットしたものに変化させていくことへのストレスが少ないということになります。

そんなことを考えながら、半年ぶりのシンガポール滞在初日、用事があってタンジョンパガー界隈に来た私は、昼食を済ませる為にCBDのど真ん中に位置するある商業ビルに立ち寄ったのですが、そこで、今の、これからのシンガポールが求めるウェルネスライフを見ることが出来たのでした。

◇(今回、ランチで立ち寄ったのは、シンガポールのオフィス街に位置する「OUE Downtown」です。オフィス棟、サービスアパートメント棟、コワーキングスペースフロアが含まれる複合商業施設の「Downtown Gallery」で構成されています。「Downtown Gallery」のテーマは、“ウェルネス”“テクノロジー”“ライフスタイル”。この日は、せっかくなので「Downtown Gallery」内を見て回ることにしました。)

まずは、「Downtown Gallery」の最上階フロアの5階から。こちらのフロアは、汗をかきたいレベルでクラスを選べるホットヨガのスタジオと、お肉料理もベジタリアンメニューもどちらも豊富なレストランで構成されていました。シンガポールには、以前から、美味しいビーガン・ベジタリアンレストランが多く存在します。菜食主義や、宗教上の理由で動物性のものを摂取しないというよりも、健康管理の一環でそういった飲食店を利用しているといった人が多い印象です。一方で、ボディメイクの為に日々の食事において動物性のタンパク質の摂取量が多くなるように意識している層もいます。ここは、どちらも我慢することなく、ワークアウトの後の食事を一緒に楽しむことができるレストランというわけですね。

次は4階です。4階は、コワーキングスペース「The Work Project」(香港企業)のフロアになっていました。「The Work Project」の利用者には、「Downtown Gallery」内の店舗、飲食店やフィットネススタジオの割引利用など優待特典があるようです。仕事を終えた後すぐに、また、仕事の合間にもワークアウトを楽しむことができます。

◇(コワーキングスペース「The Work Project」のフロアには、「Omotesando Koffee」が入っていました。両社はシンガポールではパートナーシップ関係にあるようです。東京・表参道の古い日本家屋で2011年から2015年まで営業していた「Omotesando Koffee」は、店舗を出していた建物の老朽化による建替に伴い閉店、その後、香港で事業を展開し、現在は、ロンドンと東京(虎ノ門ヒルズ)にも店舗があります。「The Work Project」を利用している人たちが、コーヒーを求めて列をなしていました。ここでは、エレベーターの乗り降りに時間を費やせないからと、美味しいコーヒーで一息いれることを諦める必要がありません。余談ですが、今年の6月にシンガポール店をオープンした京都の「% ARABICA」の第一号店も香港ですね。)

それにしても、「シンガポールはコワーキングスペース天国です」(1)。それは、狭い国土の街の至るところのビルやショップハウスの中に存在していて、立地、利用できるスペースの広さや共有設備、ファシリティ面の充実度だけでなく、この「The Work Project」のようにそれはもうため息がでるような美しくモダンで快適な空間がデザインされているところも(是非、こちら (2) でご確認ください)。今となっては、コワーキングスペースの存在は、少人数で動くプロジェクトや、初期投資をできるだけ抑えたいスタートアップ企業のためだけのものではなく、働く空間を固定せずに、その時の自分達にあった場所を選んで仕事をするという柔軟で合理的なスタイルとして幅広く受け入れられています。日系では、「cross coop」(3) や、今年7月にオープンしたばかりの「One & Co」(4) など、ここでは利用者(社)間での協業や情報交換を目的としたコミュニティ形成が期待されます。尚、最近では、フィットネス関連のインストラクター専用のコワーキングスペースも出来てきました。欧米やオーストラリアなどのフィットネス先進国でトレーニングを積んだ後、スタジオを所有することなく、自分のクラスを展開することができます。

(1) https://sgmagazine.com/city-living/news/coworking-spaces-in-singapore

(2) https://downtowngallery.com.sg/directory/the-work-project

(3) https://crosscoop.com/office/singapore

(4) https://www.oneandco.sg/

さて、おしゃれで快適な「Downtown Gallery」のコワーキングスペースで働く人達のライフスタイルをイメージしているかのような店舗展開が下層階に見えてきます。

3階です。美容室、ヘッドスパ、ネイルサロン、エステ、ヘルススクリーニングサービス(健康診断)、郵便局、そして、プリスクール(託児、保育所)が入っています。仕事の後、ヘッドスパやネイルサロンでリフレッシュしてからプリスクールに笑顔で子ども達をお迎えに、と言った感じでしょうか。子ども向けのバレエスクールもありました。また、こちらのフロアには最大200名を収容できる広いキッチンスタジオが。外食を好むシンガポール人ですが、最近では、やはり健康管理面から自炊の頻度が多くなってきているとか。いつもはカフェで集まる友人同士が、ヘルシーな家庭料理を作り合う。料理しながら、カフェトークならぬキッチントークを気軽に楽しむことができます。この日は、普段はケータリングを専門としているシェフが貸切り利用で料理教室を行なっていました。

2に階は、総合クリニック、歯科、鍼灸(TCM)、スキンケアクリニックなどの医療関係と、最新の設備とプログラムを揃えたフィットネススタジオが複数ありました。ダンススタジオも入っています。

◇(最新型のアスレチック型ワークアウトを提供している「Haus Athletics」と、「Absolute Cycle」はいずれも照明を落とした室内で、トレーナー主導のグループで行われます。暗闇の中で行うことで自分の体に集中することができる。そして、グループで行うことによって、最長45分間動き続けるというモチベーションの維持につながるとか。写真はfacebookページよりお借りしました。カッコいい…。ここでは、仕事を終えた後、5分もかからずにフィットネススタジオのドアを開くことができます。)

そして、1階には、コスメティックコーナー、自転車店、ウィスキー販売店、ゴルフ用品店、子ども服店(パーティードレスとグッズ)、花屋などなど。仕事帰りに趣味のサイクリングやゴルフのギアを調達したり、自宅で就寝前に楽しむウィスキーや家族へのプレゼントを選んだり…。なるほど。

◇(「SPECIALIZED」のコンセプトショップ。店内には美しい高級モデルがディスプレイされていました。ウェアやアクセサリも充実しています。蒸し暑いシンガポールでは、通気性と速乾性、UV効果も期待されたサイクリング専用の高機能ウェアが人気だそうです。「Downtown Gallery」の1階には「SPECIALIZED」のようなメーカー直営店舗だけでなく、テクニカルスタッフが常駐し自転車の修理やカスタマイズを行う店など自転車関連の店が3店舗入っています。そして、ビルのエントランス近くには、駐輪場が急ピッチで作られていました。)

昨今の東南アジア全体が、スポーツバイクブームのようですが、シンガポールだけを眺めて見ても、その勢いはまだまだ続きそうですね。1年を通して日差しが強く蒸し暑い気候、そして交通網が発達したこの国での自転車は、移動手段としてではなく、スポーツや週末のお楽しみとして、ある一定のエリアで親しまれていました。街中で自転車に乗っている人をあまり見かけることがない為か、“自転車新興国”と言われることもありますが、セントーサ島の高級住宅地や、自転車専用道路のあるイーストコーストパークなど一部のエリアで、自転車ライフを楽しむ人たちがいたのです。そこに、ここ数年、島内全域で安全に快適に走れる道がどんどん整備され始めたという環境面の充実。健康意識の高いシンガポール人が動かない理由がありません。シンガポール政府による「過去 4 週間に行ったスポーツ・運動」を回答する「アンケート」(7) では、30代〜40代の男性部門では、1位のランニング、2位ウォーキング、3位水泳についで、5位のジムでの運動を抑えてサイクリングが4位となっています。

(7) https://www.sportsingapore.gov.sg/

◇出典:https://www.nparks.gov.sg/gardens-parks-and-nature/park-connector-network

(シンガポールでは既存の国立公園をサイクリングロードで繋ぐ「Park Connector Network」の整備が進んでいます。シンガポール政府は、国民の健康面について長期の課題として取り組んでいて、自転車推進はその一環でもあります。美しいガーデンシティを楽しみながらのサイクリングは健康増進にも一役買ってくれる。それがシンガポールのサイクリングスタイル、というわけですね。観光客にとっても、この「Park Connector Network」は魅力的です。食、夜景、テーマパーク、文化観光が充実しているも、実は“自然を楽しむ”という観光コンテンツが薄い印象のシンガポールでしたが、自転車で国立公園をまわってリフレッシュするというアクティビティが増えました。もちろん、ウォーキングやランニングでも楽しめます。)

ここで、もうちょっと自転車関連の話を。日系企業では、スポーツ自転車部品の世界最大手企業の「SHIMANO」がアジア最大のスポーツ複合施設「Singapore Sports Hub」に自転車博物館「Shimano Cycling World」を2014年にオープンしています。

◇出典http://shimanocyclingworld.com/
(「Shimano Cycling World」では、スタッフが参加者に指導しながらシンガポールのサイクリングコースを一緒に回るバイククルーズを月に1回開催しています。安全に、そしてより自転車ライフをより楽しむティップスをここで得ることができますね。旅行者にも、シンガポール観光のプランのひとつとしてオススメかも。尚、「Shimano」は、シンガポール政府によるサイクリングイベント「OCBC Cycle」の協賛企業にもなっていました。)

さて、「Downtown Gallery」に話を戻します。1階フロアにあったもので、自転車の次に気になったのはコチラです。

◇(1階のコスメコーナー奥の壁面にはタッチパネル式の化粧品自動販売機が。女性誌のエディターのピックアップコスメが販売されていました。誌面の特集企画と連動した自動販売機というわけです。「大切な商談があるのに、リップ忘れた..!」なんてことがあっても大丈夫。ここでは、最新のトレンドカラーや、ビジネスシーンにマッチしたメイクアップアイテムを迷うことなく手に入れることができるのです。こちらのコスメ自販機では、東南アジアの女性に安定した人気の「SHISEIDO」の商品の取り扱いもありました。「SHISEIDO」は、この4月にオープンした「Jewel Changi Airport」内に、アートとテクノロジーを融合させたチームラボとのコラボレーション「SHISEIDO FOREST VALLEY」をオープンさせていますね。)

◇(最後にB1階へ。ヨガ、ボルタリング、ボクササイズのスタジオ、そして、シンガポールで生活する日本人にも人気のカフェ「The Providore」が入っていました。「The Providore」は、シンガポールに現在5店舗ありますが、「Downtown Gallery」店は、カフェ・グロッサリー・デリ・ベーカリー部門の全てが充実していました。仕事帰りに趣味のワークアウトで汗を流した日は、こだわりの食材を使って調理されたデリと美味しいワインを買って家族の待つ食卓へ。)

また、各フロアには、フレッシュジュースバーやコーヒーロースターカフェが数店舗あり、ダイニングは、毎日のランチを飽きさせないラインナップ。ローカルフードはもちろんのこと、チキンやサーモンなどを加えてタンパク質の含有量をチェックしながらオーダーできるヘルシーなサラダランチや、クライアントとの大切な会食を有意義なものにしてくれそうな高級和食、フレンチも揃っていました。

そして、「Downtown Gallery」にはサービスアパートメントが併設しています。一つの建物の中に生活に必要なモノがこれだけ充実していれば、諸外国から出張でシンガポールに長期滞在する忙しいビシネスパーソンにとっても、慣れない土地で何一つ不自由することなく、効率的に仕事をこなすことができるどころか、シンガポールに出張に来る度にリフレッシュできるかも。

「食」はもちろん、「仕事をする環境」「ウェルネス」な分野にも多様な選択肢を持ち、発展する環境が整っている国シンガポール。そして何よりも家族との時間を大切にするシンガポール人にとって、こういった合理的な環境はもっと増えていくのではないかと思います。好きなものを諦めない。やりたいこと合理的に叶えていく。そしてその中に、日本のテクノロジーや文化の産物が、人々の生活の質を高める要素としてこれからどんどん参画していくわけですね。しっかりウォッチしていきたいと思います。

次回は、シンガポールの「プラスチックフリー」について書いてみます。

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Momo

元ハワイ好きの広告営業兼コンテンツプロデューサー。海外旅行はハワイだけ!状態から、夫の事情と都合でシンガポールに移住。現在は、東京とシンガポール、行ったり来たりの生活を送るも、将来は東南アジアのどこかで暮らしたいと思っている。

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