シンガポール駐在員がみた政府の安心担保への広報活動

こんにちは、シンガポールオフィスの谷です。

世界各国でコロナウイルスの感染拡大により、仕事にも生活にもいろいろな影響が続いていますね。シンガポールでは3月15日時点で226人が感染(うち退院者は105名、死者はゼロ)。東京23区と同じほどの大きさの国なので、感染拡大もしやすく、他国に比べてもパニックに陥りやすい環境かと思いますが、企業が密集するTanjong Pagarエリアでも、マスクをしている方は1割未満でしょうか。個人的な観測では、渡航制限や会社による在宅勤務命令はあれど、国内ではそこまで大きなパニックにならず、体調がよい人は日常とほとんど変わらない生活をしている方が多い印象です。

今回はシンガポール政府の安心安全の確保に向けた、迅速で的確な広報活動についてご紹介させていただければと思います。

政府公式のWhatsappメッセンジャー

シンガポールで一番使われているメッセンジャーアプリであるWhatsappで政府のアカウントを登録すると、1日に1~3つのコロナウイルスに関するメッセージが届くようになります。このようなチャネルを政府がもつことの最大の目的はフェイクニュースを防ぎ、国民がパニックに陥らないようにするためです。

メッセージの内容としては日々の新規感染者情報がメインで、最低限のプライバシーを守りながら国籍から年齢、性別、病状の重さまで発信しています。また、別メディアで誤情報が出てしまった場合はこの公式チャネルから訂正のメッセージが届きます。さらに退院者情報についても発信し、ポジティブな情報も積極的に発信しているのも特徴的かと思います。チャネルはすべての公用語(英語、中国語、マレー語、タミル語)で対応しています。

感染者に関する誤情報に関する訂正やコロナウイルスに関連して起きている詐欺に関する注意喚起を政府公式のウェブサイトでも、発信し、常に情報を更新しています。

さらに、こちらのマップでは感染者の滞在先や訪問した先が示されています。感染者に関する正しい情報を確認することができ、自分の生活圏で感染対策を気を付けた方がよいエリアをみつけ、さらなる対策を打つことが可能です。

シンガポール首相自ら「準備ができている」「落ち着いて」

シンガポールは2月7日にSARSと同様の警戒レベルを4段階中、2番目に高いオレンジレベルに引き上げ、これにより、不要不急の大規模イベントの中止、職場ビル入館時の検温測定などが求められるようになり、国民は一気に不安なムードに陥り、同時にトイレットペーパーや乾麺などの買い占めがはじまりました。

これに対し、翌日8日にはシンガポール首相による動画メッセージが発信されました。動画ではオレンジレベルへの引き上げによりパニックに陥らないでほしいと自ら説明。動画ではいかに政府がこのアウトブレイクに対して医療的にも精神的に準備ができているかといった内容で、感染を広げないよう政府、そして個人が何をできるかを伝え、お互いに助け合ってこの危機を乗り越えようといったメッセージでした。

首相の話し方がとても落ち着いており、現実的、そして具体的でわかりやすい説明で、このアウトブレイクに対する政府の戦略に自信を非常に感じる動画です。各国パニックに陥っているような報道が日々されている中で、この動画をみた国民はかなり勇気づけられ、安心を感じたのではないでしょうか。また、WHOの「パンデミック」宣言をうけた翌日である3月12日にも、11分半にわたる動画メッセージを公開しており、コロナウイルスの長期化の可能性を伝えながらも、「依然として感染拡大を制御している」と直接国民に強調しています。

シンガポールは2003年に発生したSARSで238人が感染、33人が死亡しており、この苦い経験が生きている状況のようですが、政府の安心安全確保に関する積極的で的確な広報活動は、ステークホルダーであるシンガポールに住む方々に、伝えたい情報が正しくタイムリーに伝わっており、政府のみならず、各企業も見習える部分があるのではないかと考えています。

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