今回は中国における「ライブコマース」についてご紹介させていただきます。
1. 「ライブコマース」とは
2. 「ライブコマース」現象に対する海外の懸念
3. 政府による支援と認識
4. 今後の動向
近年、中国では「直播带货」(ライブコマース)という言葉が国内を賑わしていると同時に、他国でも似たような形でライブ配信を行なっている方々が多く見受けられます。
では、この「ライブコマース」というワードは一体何なのでしょうか?
「ライブコマース」はタオバオ、京東商城などのECプラットフォームおよび、TiKTok、快手(Kuai Shou)、Weiboなどのライブ配信機能を持つSNSプラットフォーム上で、販売者自身がライブ配信ルームを開設し、配信を通じて商品の紹介から質疑応答、購入方法などを紹介する新しいサービス手法のことです。
通常のネットショッピングと比較すると、リアルタイムで視聴者からの質問や反応に応えることができるので、親密なコミュニケーションの醸成が可能となります。 また多くの場合、市場の最低価格で販売していることが多いです。理由としては、ディーラーなどの従来の中間業者を利用していないので、市場価格と比べ安価に出品することが可能です。
よく中国のライブコマース市場で起こる現象が、人気商品において視聴者が広告を見た瞬間に”秒杀”(1秒で商品が売り切れる現象のこと)してしまうことです。日本だとNikeのスニーカーなどがよく即完しますが、この現象が中国のライブコマース市場でも頻発しております。
ここで「ライブコマース」の利点をまとめると、下記が大きなポイントです。
- 消費者は最大限のディスカウント受け、商品を購入するチャンスがある
- 最も手軽に、かつリアルタイムで商品情報の取得が可能
これらは、消費者の購入体験向上に役立ち、品質とサービスが保証された多くの製品への明るい道を開きます。
「ライブコマース」が普及し始めた当初は、ECプラットフォームやSNSプラットフォームで一部の民間キャスターが配信している程度でしたが、今では中国のトップ映画女優、歌手などまでもが「ライブコマース」チームに加わっています。現状、その影響力は益々大きくなってきました。
画像参照元 :https://www.niaogebiji.com/article-52334-1.html
CNNでも「ライブコマース」の現状に迫った記事を掲載しています。
画像参照元:https://edition.cnn.com/2020/09/06/business/china-livestream-shopping-spc-intl-hnk/index.html
こちらの参照記事は、以前客室乗務員として働いていた方が会社を辞めて、自宅から「ライブコマース」のライバーになった例を紹介しています。 ライバーになった結果、1ヶ月の収入は以前の会社で稼いだ年間の給与額より多く、大変驚いたそうです。 以下はCNNが発表した記事のおおまかな翻訳になります。
8カ月前、胡梦(Hu)氏はインフルエンサーになる夢を追いかけるため、中国の広州で客室乗務員の仕事を辞めた。
Covid-19が航空業界を揺るがす直前に航空会社に辞表を出し、寝室1つのアパートに簡易的なホームスタジオを作り、自分が話す様子を撮影し始めた。
27歳の胡さんは、少しひねりの効いたインフルエンサーです。1月から、彼女はアリババ(BABA)のeBayのようなオンライン市場である「Taobao」でライブストリーミングの司会者としてフルタイムで働き、約40万人以上のフォロワーを獲得した。
「喉がカラカラになるんですよ。この仕事では、自分の気分がリアルタイムで顧客へ伝わるため、間髪入れずトークを進める必要があります。中途半端はダメなんです!熱く語ってこそ、聴衆を興奮させることができるのです。」と胡さんが笑って言っていました。
「ライブコマース」は、推定660億ドル規模の産業に成長した新興の小売形態であり、胡さんはその競争に参加しようとする中国の新興クリエイターの一人です。このトレンドは何年も前から中国のインターネット文化の一部でしたが、アナリストによると、コロナウイルスの大流行がそれを主流にした一つの原因として考えられています。中国政府でさえも、この業界をEコマース成長の「新しいエンジン」と呼び、パンデミックにより中国で急増した失業の解決策としてライブストリーミングを奨励するなど、支援の動きも示しています。
「ライブコマース」はエンターテインメントとEコマースの融合である。視聴者は、口紅から洗濯用洗剤まで、最新の発見をリアルタイムでライブに映し出す人々から、オンラインで商品を購入しています。多くの人はこのコンセプトをテレビショッピングのQVCに例えますが、中国のモデルはより現代的で、モバイルで、インタラクティブなのが特徴です。司会者はファンにリアルタイムで割引クーポンやフラッシュディールを提供し、視聴者は気に入った配信者にバーチャルな「ギフト」などを送ることができます。
しかし、胡さんをはじめとする新規参入した配信者たちは、この分野で成功するのは簡単ではないことに気づいています。競合が多いが故にこの業界は厳しく、自分のスキルを活かして成功する人は少ないです。
胡さんの仕事を直接・間接的に支える裏方として、約20人以上のスタッフがいます。その中には、地元のタレント事務所チームも含まれており、どの商品を紹介するか、フォロワーにどんな割引をするか、撮影のスケジュールをどうするかなど、彼女のサポートをしています。胡さんの夫も雑用を手伝ってくれるようで、ときどき配信に映ることもあるそうです。
胡さんとそのチームはライブ配信だけに限らず、いくつかの方法で収入を得ています。一つは企業側が商品紹介料を支払い、胡さんはその販売額から手数料を得るというものです。iResearchのレポートによると、一般的なコミッションレートは配信プラットフォームによって6%から16%の幅がありそうです。
現在「ライブコマース」は、一般消費者に受け入れられているだけでなく、中国政府からも強い支援を受けているため、地域経済が発展し、全国からより多くの投資家が希望と自信を持てるようになったのです。
以下は、CNNの記事で言及されている内容です。
今年上半期には、1,000万件以上の電子商取引におけるライブストリーミングがオンラインで開催されたとのことです。
中国インターネット・ネットワーク情報センターが発表した報告書によると、3月の時点で、中国でショッピングのライブストリームを見ている人は5億6000万人で、昨年6月に比べて1億2600万人増加したとのことです。そのうちのほぼ半数はオンラインショッピングのためにライブストリーミングを利用したということでした。
ガートナー社のデジタル・コマースのリサーチ・ディレクターであるサンディ・シェン氏は、「ライブコマース」が中国で主流になるには、パンデミック以前なら2、3年かかっただろうと述べていますが、現状で言うと2、3ヶ月で普及したということでした。
専門家は、この業界にはまだ成長の余裕があると予測している。上海の市場調査会社iResearchによると、2019年の中国の「ライブコマース」市場の規模は4513億元(約660億円)でした。それが今年は2倍以上の1兆2000億元(約1700億円)近くになる可能性があると、同社は7月に予測しました。
アナリストは、このトレンドが海外でも流行する可能性があると予測しています。たとえば、東南アジアの一部では、アリババ(BABA)傘下のLazadaが、ライブストリーマーによる商品のプロモーションを許可している上に、アマゾン(AMZN)は、欧米のユーザー向けにホームショッピングのビデオストリーミングのハブも設けています。
中には、自分たちの街をライブの拠点にしようと取り組んでいる自治体もあります。広州市では、当局が同市を中国の「ライブコマースの都」にすることを目指しています。国営メディアによると、広州では6月に3日間のライブストリーム・ショッピング「フェスティバル」を開催し、企業が20万回以上の放送を行ったという。
国家統計局のFu Linghui氏報道官は先月の記者会見で、「経済の回復に伴い、雇用市場は実際に拡大している」と述べました。彼は市場を安定させるために「不可欠」なものとして、「ライブコマース」を挙げました。
「政府にとって、これは経済成長を維持し、雇用を維持するのに役立つトレンドだと考えているチャンスだと考えている。インフラを整備し、支援を行えば、間違いなく経済の底上げにつながると思います」とShen氏は述べました。
Image Caption: 4月に中国北西部の陝西省柞水県金米で行われた地元農産物を販売するライブショッピングの設営で、ライブ配信の司会者と話す中国の習近平国家主席。
画像参照元:https://edition.cnn.com/2020/09/06/business/china-livestream-shopping-spc-intl-hnk/index.html
「ライブコマース」は新しいタイプのビジネスサービスとして、今後の成長環境はより成熟していくと思います。それは販売だけでなく、ブランドプロモーションの重要な一部分であり、中国市場を開拓するにも欠かせない選択肢の一つとして、今後も根強い文化となっていくでしょう。
原文の参照元(英語)出典:
画像参照元:https://edition.cnn.com/2020/09/06/business/china-livestream-shopping-spc-intl-hnk/index.html
https://unsplash.com/photos/pe51lcED4tA
Law Eichen
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- 中国におけるライブコマース - February 24, 2022