【連載コラム:にほんのココを魅せたい。】vol.3 お土産を探しに行ってきました。<その2>

こんにちは。Momo です。夫の仕事に付き添ってシンガポールでの移住生活を4年間楽しんだ後、現在は東京暮らしをベースに、時々シンガポール滞在。のほほんと、なんとなく二重生活を送っています。日本(東京)で、シンガポールで、その他の東南アジアの国で見つけた日本の魅力を書いていきたいと思います。

“シンガポール人は日本で何を買う?”

前回vol.2 からの続きです> 

友人と別れて銀座を出た私は、まずは、シンガポールからの訪日旅行客が、どんなお土産を買っていくのか、移動時間を使ってインターネット上で調べて見ることにしました。まず、観光庁から発表されている「訪日外国人消費動向調査 2018年」のシンガポールを見てみると、1位が「菓子類」で、2位以下は、「衣類」「その他食料品・飲料・たばこ」「靴・かばん・革製品」「化粧品・香水」「酒類」「医薬品」「健康グッズ」と続き、買い物をする場所は、百貨店・デパート、コンビニエンスストア、空港の免税店、スーパーマーケット、ドラッグストアとなっています。さらに、シンガポール人が訪日旅行において参考にしているメディアの記事などをいくつかチェックしてみました。

◇出典:シンガポールの旅行情報サイト『TripZilla』

(シンガポールのメディアですが、同サイトで運営するSNSのアカウントを見てみると、東南アジアの他の国のフォロワーも結構いるようです。こちらのサイトの中で、東京で買うべきお土産リストという記事を見つけました。そこに書かれているのは、まずは、「東京ばな奈」、そして「銘菓ひよこ」「扇子」「箸」「弁当箱」「風呂敷」「手拭」「陶器」「和菓子」「駄菓子」「文具」「和紙」…等。また、購入場所として、東急ハンズ、ロフト、100円ショップ、まめぐい、伊東屋、ドンキホーテが紹介されています。)

訪日旅行のお土産の定番「東京ばな奈」。白い恋人、ROYCE‘と並んで不動の人気を誇ります。シンガポール人が好きなクリームフィリング入りのスポンジケーキタイプで、そこに加えて季節限定のフレーバー(抹茶とか、チーズ風味とか、苺とか…あれもこれも好きなものだらけ)が時折販売されるということも長く飽きさせずに人気を支えている秘訣なのでしょうね。効率的に旅をしたいシンガポール人には、空港の売店ですぐに見つけて購入できるという手軽さも魅力でしょう。また、最近では、「東京ばな奈」と同じメーカーの別ブランド「シュガーバターの木」も人気です。ちなみに私が「シュガーバターの木」をはじめて知った(食べた)のは、シンガポール人からの頂き物でした。東京ばな奈シリーズの安定した美味しさへの信頼から、同じメーカーの新しい商品を購入してみるに至ったとか。

そして、TripZilla の買い物リストの中で注目したいのは、「弁当箱」。記事では、“食にこだわる日本は、それらを保存する容器である弁当箱にも多くの注意を払っている”とあります。日本のお弁当箱は、デザインも機能面も充実していて選択の幅が広い。食べ終わったらコンパクトにバッグに収納することが出来る入れ子タイプや、シンガポール人にも愛用者の多いスープジャーの種類も豊富。外食の多いシンガポール人、飲食店等で自宅から持参した小さなスープジャーから乳幼児に食事を与えている様子をよく見かけます。日本では、サイズも使う人にぴったりのモノが見つかります。そういえば、家族・親戚、友人の集まりが頻繁にあるシンガポール人には、重箱も魅力的のようですよ。以前、手持ちの重箱に卵焼き、唐揚げ、おにぎりなどを詰めて友人宅での持ち寄りランチに参加したら、「寿司や正月料理以外にも使えるのね!」と興味津々でした。簡単でシンプルなおかずも、重箱に程よくきっちりと詰めてあげるだけで見栄えの良いお持たせにもなるという発見をしてもらえたわけです。

最近では、冷めたご飯を美味しく頂ける「曲げわっぱ」がヨーロッパ人を中心とした “BENTO”ブームをきっかけに人気が出て、外国人旅行客を意識したお土産コーナーでも見かけるようになりました。「曲げわっぱ」は、杉や檜などの白木から作っていて、ご飯の余分な水分を吸収し、その抗菌作用が美味しさを保ってくれます。伝統工芸品であり、おひつや弁当箱という日常品として使われてきたものです。ここから火がついて、シンガポールでも食の意識の高い人たちの間で、人気が出るかもしれませんね。

尚、こちらの記事で紹介されている他のアイテム、扇子、風呂敷、江戸切子、和紙などについても、一見わかりやすい日本らしさ(和柄等)を勧めているわけではなく、その美しさと同居する機能面について関心を示していました。世界で人気の日本の文具については、わざわざここで説明するまでもありませんが、“日本の創造性の精神が文具を通して輝きを放っている”と評されています。

◇出典:シンガポールの旅・食情報サイト『sethlui.com』

(こちらのサイトでは、シンガポール、タイ、マレーシアのブロガーの記事をまとめて見ることができます。東京旅行のおすすめプランを書いた記事では、サードウェーブコーヒーのロースターやカフェに立ち寄って美味しいコーヒーを堪能した後は、その店オリジナルのコーヒーグッズをお土産に買ってみることを勧めています。)

日本よりもいち早くサードウェーブコーヒーのムーブメントが来て、ローカルのロースターも多く存在するシンガポールですが、現在では日本各地から進出したカフェも増えて、その美味しさから、にわかに日本のコーヒーロースターブームが起きている?といった感じです。記事では、東京のサードウェーブコーヒーの火付け役である「Blue Bottle Coffee 」を例としてあげていますが、東京・恵比寿の「猿田彦珈琲」や、広島の「OBSCURA COFFEE ROASTER」、シンガポールからの旅行客に人気の京都の「%ARABICA 京都」などのドリップバッグは、お土産に喜ばれそう。味と香りもさることながら、そのパッケージの日本らしいミニマルなデザインがシンガポール人にも受けそうです。

日本のミニマルデザインと言えば、シンガポール国内に17店舗もの展開がある「Muji(無印良品)」。その世界旗艦店となる「無印良品銀座」が、今年の4月に銀座並木通りにオープンしました。銀座よりも新宿に行く!と言っているシンガポールの知人たちも「無印良品銀座」には立ち寄ってみたいと思っているようです。(…今回、銀座に足を運んだのに、こちらに立ち寄る時間がなく移動していましました。近いうちに覗いてみたいと思います。)

  • 出典:シンガポールのライフスタイル情報メディア『mothership』

(世界旗艦店「無印良品銀座」のオープンと同じタイミングで、シンガポールにも新店舗が出来ています。シンガポール国内17店舗目の「Muji」は、チャンギ国際空港に隣接の大型商業施設内「MUJI Jewel Changi Airport」店です。シンガポール初となる多層階店舗として2フロアでの堂々オープン。こちらのサイトの記事ではその広々とした店内、充実した商品数の紹介とあわせて、MUJIのインテリアコーディネート相談を無料で受けることができるということに感動している様子が。衣類、文房具、生活雑貨だけなく、自宅や自室も日本のミニマルデザインを施すことができるというわけですね。)

狭い国土の中に、日系のスーパーマーケットや百貨店、専門店、飲食店が数多く存在するシンガポール。買い物好きで、日常で既に数多くの“日本”に出会っているシンガポール人には、日本の「このメーカーの、この味」や「このブランドの、このシリーズ」が好き、といったこだわりが、その時々でしっかりとあるように感じます(そのこだわりを、良く話されます!)。旅の計画を緻密に練るのが好きで、何度も訪れている日本に新しい体験価値を求めている彼らは、効率的に旅程の隙間時間を使って、お気に入りの日本のブランドのシンガポールでは買えないアイテムのお買い物を楽しんでいるのかもしれません。そして、彼らが興味関心を寄せる“日本のモノ”とは、「高い機能性」「日本的なミニマルデザイン」「食へのこだわり(職人のこだわり、伝統)」といった欧米人を中心とした外国人に受け入れられる日本的要素が強いのではないかと思います。

さて、“日本らしいお土産”探しは続きます。銀座から移動し、JR新宿駅に到着すると、駅構内にある店のディスプレイが目に入りました。明らかにMADE IN JAPANのお買い物ができそうな場所。店内には外国人旅行客の姿も見えます。お店の方に声をかけ、シンガポール人へのお土産を探していることを話すと、「とにかく日本の文具は外国人旅行客に人気です。」と言って、竹紙のノートと竹枝を利用して作られたボールペンを見せてくれました。

◇(写真左:日本の竹100%を材料としたノートと、竹枝ボールペン。どちらも「市川商店」)さんの製品です。写真右:写真は市川商店さんのインスタグラムからお借りしました。市川商店さんは南千住に店舗があって、キッチン用品、インテリア用品、玩具、バッグetc. とありとあらゆる竹製品を取り扱っています。長く使えて美しい竹製品。これだけ選べる商品の幅があると、外国人旅行客に喜ばれそうです。)

ノートは、中を開くとほんのりと竹の香りがします。ボールペンは、竹枝の空洞がある一節目をボールペンに利用していてインクがなくなったら替え芯に入れ替えることができます。以前の日本では、伐採された竹は、竹垣、竹かご、竹ざる等に利用されて、暮らしに根付いたものでしたが、近年の生活様式の変化などで竹材の需要がぐっと減って、日本中で放置竹林の問題が起こっているそうです。竹は成長力・生命力が非常に強く、放っておくと、他の植物の生息、成長を脅かす存在にもなってしまうため、定期的に伐採していくことが大切なわけですが、ただ伐採して終わるのではなく、何かに有効利用できないか?ということで作られたのが、これらの竹製品だそうです。

竹の間伐材を利用した製品としては、竹ストローが良く知られています。世界的な課題になっているプラスチックごみによる海洋汚染への対策として作られていて、東南アジアの各国で、環境問題に意識の高い飲食店で使われているのを見かけるようになりました。日本では、1週間程前(※この記事は2019年7月3日に書いています)に大手飲食チェーン店で使用されはじめたことが話題になっていますね。

シンガポールには、欧米先進国からの人々が多く集まり、地理的に近いオーガニック大国のオーストラリアの影響なども強く受けています。環境問題に対する彼らの姿勢やトレンドを受けて、その需要に叶った店舗や商品がシンガポールにも入ってきます。そしてそれらが、当地の人のライフスタイル、意識の変化に大きく影響を及ぼしています。前回、私がシンガポールに滞在したのは昨年の12月から今年の1月にかけてです。そこから半年ちょっと経って、シンガポールがどう変化しているか、次の滞在が楽しみです。尚、こちらのノートとボールペンはシンガポールからの訪日旅行客に人気の新宿や渋谷のロフトでも取り扱いがあるそうです。私はいずれもお土産用に購入しました。

さて、次に向かった先は、シンガポール人にお馴染みの「TAKASHIMAYA」。その高島屋新宿店の地下食品フロアです。シンガポール人が、お土産購入によく利用している場所だし、著名なパティシエが監修したキットカットの専門店も入っています。「キットカット」の抹茶やいちご味、それと日本でしか買えない季節限定のフレーバーは、外国人旅行客の家族、会社の同僚、友人へのお土産として、もうここ何年も王道ですね。空港の売店には必ず置いてあります。シンガポールのローカルスーパーでも、抹茶味のキットカットは常に見かけるし、やはりコレは間違いないのかな、しかも、ここ新宿高島屋でしか買えないフレーバーがあるし…とほぼ決め打ちをしたものの、念の為、コンシェルジュカウンターに向かいました。1年を通して買い物客の動向を見ていて、アドバイスをしているスタッフの方々がいます。相談してみない手はありません。…すると、「キットカットは欧米系の方に人気がありますが、シンガポールの方が好まれてよくお買い求めになるのは“餅菓子”です。」との答えが。なるほど!確かに、シンガポール人は餅菓子をよく食べています。

◇(左:シンガポールでも買える美味しい日本の餅菓子と言えば、「源吉兆庵」。1993年に初の海外拠点としてシンガポール法人を設立し、シンガポール高島屋店をオープンしています。※写真は、新宿高島屋店で撮影したものです。 右上:もとは祝い菓子ですが、普段も良く食べられている人気の餅菓子「アンクークエ」は、オシャレなローカルのカフェのショーケースにも。 右下:アジアNO.パティシ「Janice Wong」のMochiスイーツ。)

次に、新宿高島屋の中にある東急ハンズ(文具売り場のレジと特設の食品サンプルコーナーに外国人旅行客の列が)、ロフト新宿ミロード店を見てまわり、悩みに悩んで購入したお土産は、新宿ルミネにある「中川政七商店」のお弁当箱と竹製のお箸なのでした。

◇※画像は、「中川政七商店」さんのWebサイトからお借りしました。

(お弁当箱と、竹で出来た弁当箸。日本らしいミニマルデザインのお弁当箱は、漆器のような風合いでまるで小さな重箱の様。ホーカーセンター(シンガポール人の日常の食を支える屋台街)に置かれている箸はプラスチック製。竹製の箸なら、好きな麺類もつかみやすく、舌触りも美味しく感じるはず。この日私は、新宿ルミネの中に入っている「中川政七商店」にも足を運んで、お土産選びをしていたのですが、英語を話す中華系の旅行客を発見し、その様子をウォッチすることに時間をとられて、何も買わずに帰ったのでした。よって、このお弁当箱とお箸は、帰宅後に自宅で「中川政七オンラインショップ」で購入しています。ルミネは、2017年11月に、ルミネ初の海外店舗としてシンガポールにもオープンしていますね。)

こちらのお弁当箱のネーミングは、「ごはん粒のつきにくいお弁当箱」。その名前のとおり、ごはん粒が付きにくい作りになっていて、汚れが落ちやすく、軽くて耐久性が高い。しかもレンジや食洗機にもかけられるんです。樹脂で塗装してありますが、しっとりとした漆器のような風合い。それもそのはず、400年以上の歴史を持つ「山中漆器」の産地、石川県加賀市にあるお弁当箱メーカーさんの技術から生まれたものなのでした。美しい工芸品ですが、現代の生活にあった日常品です。竹製のお箸は、お弁当用にちょうどいいコンパクトさで、持ち運びに耐えるように箸先を太めにして強度を高めているとか。セットの箸袋には、使い終わった後に安心してしまえるように水や汚れに強い撥水加工の生地が使われています。

バースデープレゼントを兼ねたお土産探しは以上で終了です。「お弁当箱と竹の箸(と箸袋)」「竹のノートとボールペン」「餅菓子」、銀座ロフトで購入した「毛穴ケア用シートマスク」(日差しの強い国では「美白」だけでなく「毛穴の広がり」も大きな美容課題です。)を添えて出来上がり。シンガポール人を取り囲む環境、トレンドと、“日本らしさ”が同居したお土産セットになったかな?

次回は、シンガポールから記事を更新します。

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Momo

元ハワイ好きの広告営業兼コンテンツプロデューサー。海外旅行はハワイだけ!状態から、夫の事情と都合でシンガポールに移住。現在は、東京とシンガポール、行ったり来たりの生活を送るも、将来は東南アジアのどこかで暮らしたいと思っている。

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