【連載コラム:にほんのココを魅せたい。】vol.6 バンコクから東北6県へ。杜の都・仙台を拠点に期待される訪日旅行。

こんにちは。Momo です。夫の仕事に付き添ってシンガポールでの移住生活を4年間楽しんだ後、現在は東京暮らしをベースに、時々シンガポール滞在。のほほんと、なんとなく二重生活を送っています。日本(東京)で、シンガポールで、その他の東南アジアの国で見つけた日本の魅力を書いていきたいと思います。

“快適な移動、自然と文化とショッピング、どれも諦めない充実旅。”

さて、私は今、実家のある仙台・宮城県に来ています(11月下旬に執筆)。私達家族の場合、お盆や年末年始など、長く休みがとれる時期は夫が生活するシンガポールで過ごすことになっているので、仙台に帰るとなると、だいたい毎年秋頃か、新緑の眩しい季節の3連休。そういった時期になると、「あぁ、仙台に行こうかなぁ」と気持ちが自然と動きます。

仙台は、とにもかくにも利便性の良い充実した街です。「ショッピング」、「食」、「自然」、「温泉」、「アウトドアな趣味」、「雪景色、スキー」、今やりたいことがすぐ目の前にある、といっても過言ではありません。どこに行くにも何をするにも近い!コンビニエンス。また、それぞれ全く違った魅力、文化的な観光資源を持つ東北他県へのアクセスも新幹線1本と、各駅から温泉旅館や観光地までの送迎バスで快適に移動することができます。

あれ??・・・訪日旅行に求められている要素が盛り沢山ですね。仙台を起点とした東北旅行。東京駅から仙台駅まで新幹線で1時間半ですから、日帰り東京観光を盛り込むことも可能です。

・・・そんなことを考えながらも、今回の私の仙台への帰省は2泊3日で、4歳の娘と一緒に実家で母とゆっくり過ごすことを目的としていたので、他県に遊びに行くことは予定にいれていませんでしたが、せっかく仙台に来たのだから温泉に入っていきたいな…、ということで、仙台駅から電車で30分、「作並温泉」のある作並(仙台市)まで足を伸ばしてみることに。そしてここで、数年前には見られなかった光景を目にしたのでした。

◇(仙台駅からJR仙山線に乗って30分でこちら、「作並」の風景です。電車を降りて駅を出た瞬間に思わず深呼吸。この日は曇り空でしたが、写真で感じるような寒々しさはなく、コートを脱いでしばらくいられるほど暖かい日でした。残念ながら紅葉の見頃は逃してしまったものの、冬の訪れの前の「さざんか梅雨」の影響で、山肌にモヤがかかって何とも幻想的な風景に。多様な樹木で構成された深みのある風景は、日本ならではですね。いつ、どんな季節に訪れても感動します。そして、あちらこちらでこの風景を写真におさめる外国人旅行客の姿が。)

◇(写真左:作並駅の無人改札を出たところ。作並温泉の旅館からの送迎バスを待つ人々の中には、タイや台湾からの旅行客かと思われる姿が見られました。桜、紅葉、雪、を観賞できる時期以外でも海外からの旅行客がいつでも当たり前に目の前にいる。数年前までの仙台では感じなかった景色です。 写真右:作並駅からシャトルバスで7分、「ニッカウヰスキー仙台工場(宮城峡蒸留所)」の敷地内にて。こちらの人気は国内では言わずと知れていますが。)

日本のウィスキーは海外で賞を受賞した影響もあって外国人旅行客にも人気です。観光だけでなく、ウィスキーを買う目的で北海道の「余市蒸留所」に訪れる外国人も多いとか。ここ数年では、こちら仙台の「宮城峡蒸留所」にも多くの海外からの旅行客が訪れるようになっています。「宮城峡蒸留所」の年間来場者数は約24万人で、2018年では、そのうち1万人近い外国人旅行客(団体客としては2017年より約6000人増)が訪れています。世界的なウイスキーブームに加え、無料で工場内を見学し、ウィスキーを試飲できるといった体験が人気となっているようです。

こういった工場見学など体験型の「コト消費」。“そこに行ったら、何ができる?”は、昨今の訪日旅行、行き先を決める要素として重要なポイントとなっていますよね。観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、2018年の訪日客の旅行消費額のうち「娯楽・サービス」は1722億円と、飲食や買い物より少ないものの、5年前の5倍近くまで伸びています。

尚、宮城県内では、「ニッカウヰスキー宮城峡蒸留所」の他、キリンビール仙台工場の見学も外国人旅行客に人気があって、こちらも来場者数が急増しているとか。

そして、この背景には、仙台空港のLCC台湾便(毎日就航)の就航があります。仙台空港に降り立つ外国人旅行客は、現在、台湾在住者が最も多く、2017年と2018年の同時期を比較してみても、その数は約4倍にも伸びています。

仙台空港に乗り入れている国際線は台湾便の他に、韓国(ソウル)、中国(大連・北京・上海)、そして、今年10月29日より、タイ国際航空による仙台-バンコク線の運航が再開されました。仙台→バンコク、バンコク→仙台ともに週3便の運行です。仙台空港を起点に、宮城県、そして東北地方に足を運ぶタイからの旅行客が、これから増えていくということですね。

タイからの訪日旅行客の74.8%は個人旅行手配(観光庁『訪日外国人消費動向調査(平成29年版)』より)。雪や温泉、日本の伝統的な景色など、タイで見られない風景のSNS映えを期待して訪れる人が多く、一週間前後の滞在で定番観光スポット巡りした後、日本国内の日帰り旅行をする人が増えているとか。また、日差しが強く年間を通して気温が高いタイでは、街中を歩きまわることは少なく、旅先においても、歩くことを避けたバスや電車のツアーが定番人気のようです。仙台を起点とした東北旅行との親和性が高そうです。参考までに、バンコクの現地旅行会社の東北を旅先としたパッケージツアーの内容を見てみました。

◇(出典:タイ現地旅行会社「SBA travel」 のウェブサイトより
訪日旅行の取扱い経験の長いタイの主要な訪日ツアーオペレーター「SBAトラベル」。こちらに掲載された東北エリアを含んだパッケージツアーの旅程を確認してみると…。まず、バンコクから仙台空港へ。空港からバスに乗って銀山温泉(山形)→山形蔵王の樹氷→白石蔵王のキツネ村→裏磐梯→鬼怒川いちご園→東照宮→新宿でお買い物→浅草→東京スカイツリー→成田空港からバンコクへ。SNSで話題の観光スポットがてんこ盛りです。)

さて、ここで気になるのが、受け入れ先の言語対応策です。仙台駅周辺で飲食店や、服飾店を営む知人達の話では、現在、仙台で最も多い外国人旅行客、台湾からの旅行客の多くはスマートフォンの翻訳アプリを活用して、店員さんとのコミュニケーションを積極的に楽しんでいる様子。では、受け入れ先の対応はどのように進められているのでしょうか。

◇(出典:ニッカウィスキーが提供しているスマートフォン・タブレット端末専用の「蒸留所見学ツアーガイド」
2019年11月現在では、英語、中国語、韓国語に対応。広い敷地内も、このツアーガイドがあれば、ウイスキー造りに理解を深めながら、迷わず蒸留所内を見学することができます。ツアーガイドは、「余市」「宮城峡」のいずれも用意されています。また、見学ツアーでは、英語の音声案内用ヘッドセットも用意されています。)

実は、作並駅で出会ったタイからの家族連れの旅行客(英語で応えてくれました)に“宮城県、仙台への旅行は初めてですか?”と話しかけて見たのですが、北海道を旅行した際、「余市蒸留所」の見学に参加したのをきっかけに、「宮城峡蒸留所」に訪れることを目的として仙台に足を運んだのだ、と教えてくれました。このタイ人家族は、「余市蒸留所」で家族と撮った写真をいくつか見せてくれたのですが、北海道の大きな自然の中の歴史ある美しい工場、そこで造られる世界的に有名なウィスキーに、「蒸留所見学ツアーガイド」を通して自然に理解を深めながら試飲するといった体験がとても充実した思い出になったようです。ただただ、美しい、珍しい、面白い写真を撮るだけではない、今度またこういった体験をしたいなぁ、と次の旅へのモチベーションにつながる観光ができたということなのでしょうね。

作並温泉で一息ついた後、仙台駅に戻った私は、仙台市内にある外国人旅行客向けの観光案内所に行ってみることにしました。

(写真左:訪日外国人向け観光案内所「isendai」です。こちらは、仙台駅周辺の老舗デパートの中にあります。ここでは、仙台をはじめとする東北地方の観光情報の案内を英語と中国語で提供しています。 写真右:案内所に設置されている配布用の資料はタイ語にも対応していました。)

◇(上述の観光案内所「isendai」のスタッフの方にお話しを伺ったところ、webサイトで申し込むことできる体験型観光が外国人旅行客にとても人気だとか。利酒やこけしの絵付、仙台市場ツアーなどの文化体験を通訳付きで楽しむことができます。)

尚、宮城県や仙台市では、外国人旅行客の満足度向上のため、Free Wi-fi(仙台駅や各地下鉄の駅構内、飲食店、温泉旅館やお寺など県内370か所以上で利用が可能な「みやぎ Free Wi-Fi」と、仙台城跡や瑞鳳殿などの観光地の他、仙台市内だけで230か所以上で利用が可能「SENDAI FREE Wi-Fi」が提供されている)の整備を進めています。

◇(出典:るーぷる仙台ウェブサイトより:
「SENDAI FREE Wi-Fi」は、仙台市中心部の観光スポットを巡る観光バス「るーぷる仙台」の車内などでも利用可能。仙台市内の観光案内所には、「SENDAI FREE Wi-Fi」のタイ語版の案内パンフレットも設置されていました。)

その他、訪日外国人旅行者向けの取り組みとして、観光情報ウェブサイト「ライブ・ジャパン・パーフェクト・ガイド東北」が今年9月にローンチしています。こちらは、東北観光推進機構、飲食店情報サイトぐるなび、JR東日本など6社・団体でつくる推進委員会で運営され、東北6県の観光、交通といった情報を閲覧することができます。サイトの公開時点では、飲食店や宿泊、観光施設など約480件の情報が紹介されていました。

◇(出典:「LIVE JAPAN (https://livejapan.com/)」
英語、中国語、韓国語、タイ語他、8言語に対応。観光情報の他、交通経路の検索機能や外国人編集者による記事も掲載されています。尚、同サイトは “災害情報も含め必要な情報を広域的に提供する画期的なサービス”として、災害情報サイトをリンク掲載している他、災害時には掲載施設が情報発信できる機能を持っているそうです。)

今年10月の仙台とバンコクを結ぶ国際定期便の運行再開前、8月27日に東北6県の知事、副知事らがバンコクに出向く合同トップセールスを行われています。東北への訪日外国人旅行者拡大を目指し、現地の行政、観光担当者らとの関係の構築と強化、相互交流の機運醸成を図るのが目的です。海外での合同トップセールスは東北観光推進機構の主催で、2016年8月の台湾、2017年7月の香港、2018年8月の中国・大連に続き4回目。そして、合同トップセールスの数日前になる8月24日・25日には、現地で日本政府観光局(JNTO)主催の日本東北観光フェアが開かれ、東北の自治体や民間企業が観光の魅力をPRしています。台湾からの旅行客のように仙台空港を起点に訪日旅行を楽しむタイからの旅行客が増えていくことが期待されます。

そして、次回の更新は、バンコクから。現地で、訪日旅行につながるヒントを探して見たいと思います。

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Momo

元ハワイ好きの広告営業兼コンテンツプロデューサー。海外旅行はハワイだけ!状態から、夫の事情と都合でシンガポールに移住。現在は、東京とシンガポール、行ったり来たりの生活を送るも、将来は東南アジアのどこかで暮らしたいと思っている。

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