【連載コラム:にほんのココを魅せたい。】vol.7 バンコクでもお洒落な人は菜食・オーガニック志向へ。

こんにちは。Momo です。夫の仕事に付き添ってシンガポールでの移住生活を4年間楽しんだ後、現在は東京暮らしをベースに、時々シンガポール滞在。のほほんと、なんとなく二重生活を送っています。日本(東京)で、シンガポールで、その他の東南アジアの国で見つけた日本の魅力を書いていきたいと思います。

“世界的に急増しているべジタリアン・ヴィーガン人口。そしてバンコクの今。”

2020年になりました!新年をシンガポールか、または近隣の東南アジアのどこかの国で迎えるのが恒例となっている我が家。今年の年始の家族旅行はバンコクです。

行きたいところは山ほどあれ、年々、東南アジアの暑さに耐えられなくなっていく娘(シンガポール産まれの冷房育ちだから?)との屋外での移動には限界があるし、ホテルのプールでのんびり、そしてお買い物、美味しい食事三昧で、一年の疲れを癒して新しい年への活力につながる旅行になればいいなぁ。そして、前回の記事(vol.6)で触れた仙台・作並で出会ったバンコクからの旅行客家族。実は彼らに、1月にバンコクに行くことを話して、いくつかおすすめスポットを教えてもらっていたのです。

アドバイスをくれたタイ人家族は、40代のご夫婦、12歳と8歳の姉弟とおばぁちゃんの一家でした。とーってもお洒落で素敵なご家族(ご夫婦ともに、建築のお仕事をされている)。お勧めリスト、訪れるのが楽しみです。そうそう、彼らにお勧めを聞いたときに最初に確認されたのが、

“ところであなたはベジタリアン?”

以前のバンコクでは、“ベジタリアン”“ヴィーガン”それと“オーガニック”といったワードから連想されるのは健康管理のためのお年寄りの食事や、ライフスタイルであったとか。それが、近年のタイの経済発展と世界的に健康志向の人が増えた影響もあって、オーガニック食材や製品が陳列する棚はアッパーミドル層から富裕層向けのスーパーマーケットだけでなく、庶民向けの量販店でも増加し、バンコクのビジネス街や住居エリアでは、タイ産のオーガニック野菜を使った料理やドリンクを提供するベジタリアン、ヴィーガンカフェが増えているとか。私はベジタリアンではありませんが、旅先でこそ、安全で美味しい野菜をたっぷり摂りたい、と考えているので、これはかなり嬉しい情報です。話をしてくれたタイ人家族も、家庭での食事では、健康のためにオーガニック野菜を極力選んで調理しているし、旅先でも滞在中の食事の回数のうち2割は菜食中心になるように心がけていると言っていました。

ベジタリアン・ヴィーガンなどの菜食トレンドについてちょっと調べてみると、(出所:https://tokyovegan.net/ever-increasing-vegan-population/

)世界の菜食人口は、健康上の深刻な問題を抱えていることを背景に、アメリカなどの欧米諸国を中心に爆発的に増加しています。身近な健康問題としては肥満。アメリカやイギリス、オーストラリアなどの国では肥満は深刻な社会問題ですよね。そして、これらの国々では、糖尿病人口も増加しています。2型糖尿病などの慢性疾患に動物性食品の摂取が深く関係していることが、近年大きく取り上げられており、肉や卵などの動物性食品の摂取により心疾患のリスクが高まることも確実視されています。食生活による健康問題が浮き彫りになっている欧米社会において、菜食の効果が医学的にも認められるようになったことが、近年の菜食実践者増加に大きく寄与していると考えられています。

そして、欧米先進国に続いて、タイにもこの“健康のための菜食トレンド”は訪れます。(出所:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2018/29fa266c97bc4316/hls-bgk.pdf

)タイ政府は年々増加する肥満人口、高血圧、糖尿病等の生活習慣病を防ぐため、国民の健康増進や疾病予防に関する活動を推進しています。「ThaiHealth Promotion Foundation」では、健康維持に理想的な食事として、炭 水化物、肉魚、野菜・果物の摂取割合 を「1:1:2」にすることを推奨。政府の取り組みもあって、消費者の目も野菜に向いてきているわけですね。ジェトロによる「バンコク都民の健康長寿意識」調査2017年(バンコク都在住の男女20代〜50代 合計 400名)では、“バンコク都民の健康意識は総じて高く、特に若い世代は健康増進にかかる活動や支出には積極的。退職後の生活については、楽観的な人が多い一方で健康の維持に対する不安を抱える人が多いことが分かった。”とあります。

◇(出典:ジェトロ「バンコク都民の健康長寿意識」調査2017年 こちらのアンケートでは、日本を健康な国とイメージする人がアンケート回答者の95%でした。健康管理面での日本食への期待が伺われます。また、子どもの健康増進のために行っていることとして野菜の摂取と回答している人が82%です。)

健康志向による菜食のチョイスでは、当然、野菜の質にもこだわるようになります。無農薬、または出来るだけ体に害のある農薬の使用を削減しているオーガニックなものを好むようになっていくわけですが、どうやら、タイでオーガニック野菜が身近なものとなった背景には、タイ国民に敬愛され続ける、故プミポン前国王(ラーマ9世)が指導した「ロイヤル・プロジェクト(http://www.royalprojectthailand.com/about)」が関係しているようです。

「ロイヤル・プロジェクト」とは、タイの山岳地帯に住む貧しい農民の暮らしを支援するために、故プミポン前国王が自費を投じて50年前に始めたもの。違法で行われていたアヘン栽培を排除し、農業によって国民が自立したより良い暮らしができるようにと援助を開始したのが始まりでした。「ロイヤルプロジェクト」が掲げた目的には、「森林や流域などの天然資源の破壊を減らすことでタイの人々を支援する」「土壌を守り、土地を正しく利用する」といった内容が含まれています。その土地の人と自然を守り、持続可能な農業を追求した結果、オーガニック野菜の栽培につながっていくのですね。

さて、仙台で出会ったタイ人家族に教えてもらったバンコクのお勧めスポットをいくつかご紹介します。私のリクエストは、「バンコクのトレンドを感じたい」「お洒落で居心地の良い場所」そして、「子どもに優しい食事を提供しているお店も知りたい」といった内容だったのですが、もうしっかりとバンコク旅を満喫させてもらうことができましたよ。

◇(バンコクに16店舗を展開するオーガニック食材、製品の専門店『Lemon Farm(レモン・ファーム)』。新鮮な国産のオーガニック野菜、果物が並びます。店内には「ロイヤルプロジェクト」製品の棚も(写真右)。若い世代にも人気があった前国王の「ロイヤル・プロジェクト」の製品は、現在もタイの人々に広く支持されています。)

◇(写真左:『Lemon Farm(レモン・ファーム)』併設のカフェ。私が店内を物色し、買い物をしている間、夫と娘は併設のカフェでタイ産オーガニックフルーツのコールドプレスジュースを堪能していました。平日の昼時、ビジネスマンや外国人の買い物客で賑わっていました。 写真右:今回お土産に買ったもの。ロイヤルプロジェク製品のドライフルーツと、バナナチップスにタマリンドジャムがサンドされたもの。トムヤムフレーバーのカシューナッツ、タイ北部のDoi Tung(ドイトゥン)コーヒーも王室ブランドです。原材料はすべて国産で基本的にオーガニック。いずれも店員さんお勧めの人気商品です。)

続いて、感度の高いバンコクローカルが集うレストランとして、オープン以来注目を集めているタイ料理レストラン「The Never Ending Summer(ザ・ネバーエンディング・サマー)」へ。提供される料理は、全てタイ産の厳選食材を使い、パリのフランス料理店で修行を積んだシェフが、伝統的なタイ料理を現代風に仕上げたもので、メニューは、季節のハーブをふんだんに使うため2~3ヶ月毎に変化するそうです。

◇(「The Never Ending Summer」は、氷工場を改装して作られたレストランです。書店やカフェ、インテリアショップなどが入る商業施設「The Jam Factory」の一角にあります。「The Jam Factory」は、複数の元倉庫で成るスポットで、バンコクのカルチャー発信地として知られているとか。レストランは川沿いにあって、緑の木陰が涼しく気持ちよかった!私はここでマッサマンカレーとローゼルドリンクを頂いたのですが、食べることに夢中になっていたのか、料理の写真を撮ることを失念… 涙)

お次は、『Bangkok Farmers Market(バンコク・ファーマーズ・マーケット』です。毎週土日に開催されるバンコクで一番人気のファーマーズマーケットは、バンコクのオーガニック事情だけでなく、様々な今のバンコクカルチャーに触れることができます。

◇(写真左:「Bangkok Farmers Market」では、新鮮なオーガニック食材の他、人気のベーカリーやアパレル店も出店しています。 写真右:「Bangkok Farmers Market」に出店していたタイのオーガニックスキンケアブランド。とてもいい香りで気に入ってしまったので、直営店まで足を運びました。こちらの製品はシンガポールのHotel Fort Canningのスパでも使用されているとか。安心安全な原材料で作られた地元産のお土産、お買い物が楽しくて、ついつい財布の紐がゆるくなります。)

最後に、バンコクのメインストリート・スクンビット通りから少し入った住宅街の中にある『Patom Organic Living(パトム・オーガニック・リビング)』です。ナコーンパトム県にあるオーガニックファームが運営に携わっていて、オーガニックな産直野菜やフルーツ、それらを使用した食品やスパアイテムなどを販売しています。タイ国内のみならず多くの観光客からも注目を集めています。オーガニックタイ料理弁当は、バンコクの平均的なランチ代の3倍近くの値段になるものの、ローカルにも人気が高いそうです。

◇(住宅地の中に突如現れた緑のオアシス、といった感じ。ヨガクラスや子ども向けの造形ワークショップなども行われています。オーガニックな暮らしをテーマとしたライフスタイルコンセプトショップですね。そして何よりも目についたのが、敷地内の至る所で気合の入った写真撮影をする人たちの嵐。確かに、どこをどう切り取っても美しい場所なのです。SNSにアップされた写真が話題となり、オープンして間もなくしてあっという間に人気のスポットとなりました。  ※写真は、「Patom Organic Living https://www.facebook.com/pages/Patom-Organic-Living/ 」からお借りしました。)

若い世代では、健康面よりもファッション感覚で菜食や、オーガニック食材・製品などを取り入れているといった側面もあるようですが、いずれにせよ今のバンコクでは、どの世代にも食生活のトレンドの中心に、“菜食”“オーガニック”がある。といっても過言ではない!という印象を受けました。

もともと、タイには、ベジタリアン・ヴィーガン天国、聖地ともいわれているチェンマイ(タイ北部)があります。チェンマイは、タイマッサージ・ヨガ・瞑想に造詣が深い地域で、ベジタリアン・ビーガン志向の旅行客が多く、世界中からヘルスコンシャスな人が集まる街として、世界水準レベルのベジタリアン・ヴィーガンカフェやレストランが発展しているとか。

対して、日本の現状はどうでしょうか。訪日旅行に期待される最も大きな要素は“日本食を楽しむ”です。ベジタリアン・ヴィーガン人口が世界的に急増している昨今、求められる食のあり方の多様化、日本の対応の遅れがあらゆるところで問題視されていますが、菜食メニューのみを提供し、そのスタイルをコンセプトとしている宿も増えています!欧米で人気のリトリート型施設(日常から離れた場所で心身を癒すことを目的とした食事やプログラムを提供する滞在型施設)です。例えば、湯河原にある「ご縁の杜http://goennomori.jp/」は、通常食事メニューがオールヴィーガンで、グルテン・五薫・アレルギーも対応してくれる宿。貸切で利用できる温泉露店風呂も楽しめます。熊本・阿蘇の大自然の中でリフレッシュできる宿「TAO Retreat & Café https://taoretreat.jimdofree.com/」もオールヴィーガンメニュー。静岡、山梨方面では、お寺に宿泊し精進料理を楽しめるところも。訪日旅行に期待されるもうひとつの要素、“日本の自然を楽しむ”も充分にセットされたプランになります。SNSでも世界中のリトリート型施設の投稿写真を楽しむことができますが、どれもため息が出るようなものばかり。これらを見て、次の旅先を決めている人は多いはず。せっかくの“美味しいはず”の日本旅行。これしか選べなかった、ではなく、期待以上の体験、再訪のきっかけをつくってもらいたい。

今回のバンコク旅、観光大国タイは、ただ、美味しい、美しいだけではない、時代が求める食の多様なニーズを受け止めていた。そんな発見ができたのでした。

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Momo

元ハワイ好きの広告営業兼コンテンツプロデューサー。海外旅行はハワイだけ!状態から、夫の事情と都合でシンガポールに移住。現在は、東京とシンガポール、行ったり来たりの生活を送るも、将来は東南アジアのどこかで暮らしたいと思っている。

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